セールを作る際の基本的な作業工程は、この二十年間大きく変わらずに来ました。 ラミネートセールは今でなお、ヤーンを両面から合成樹脂のフィルムで挟み込み、二枚のフィルムを接着する方法で作られています。しかし保管時に折り返され、タックやホイストを繰り返すと、この接着された部分が原因となってセールが壊れてしまうのです。セールは接着部から剥離し、フィルム同士が離れると、ヤーンを支えるもが無くなってしまいます。するとセールは構造的な強度を失ってしまうのです。また、接着剤はセールの重さを増やす原因でもあります。強度が上がるのであればそれで相殺出来ますが、剥離してしまえば、ただセールを重くするだけの要素になります。
一方でM3 Technologyはセールを作る際に接着剤を使用せず、これには様々なメリットがあります。既存の方法ではヤーン自身にも接着剤が浸透し、その柔軟さが失われていました。セールの動きに合わせてヤーンがねじられたり折られたりすると、その部分から壊れ初め、セール全体の強度が下がっていきます。しかし接着剤が無ければ、ヤーンはそのしなやかさを保持することが出来ます。セールが動いた際にも繊維一本一本が自由に動くことによって、セール全体に均等に負荷がかかりようになります。これによりヤーンの量を減らす事が出来るだけで無く、またラミネートセールでは必要な接着剤が不要となるため、セールは15%~30%軽くなります。
M3TMのフィルムは、0.05気圧まで下げられた真空バック内にて圧着されます。この時の圧力は最低でも1㎡あたり9tにもなり、その後フィルムは真空バッグごと、コンピューター制御のオーブンに入れられます。この時セールに高圧と高温が加わることにより、二枚のポリマーは不可逆過程を経て、一枚の層に融合します。これにより二枚のマイヤー層は、構造糸を内包したまま圧着されます。ここで重要なのは、ポリマーは「融合」するのであって、「接着」される訳では無いということです。この結果としてフィルムはしなやかで柔軟性に富んだものとなり、さらに接着剤を使用してないため、長期間使用しても剥離の心配はありません。またモールドセールにはそれ以外にも、多数の問題点が存在します。十分に高温かつ均一でない加温を、セールの片側のみに加える点(剥離の主な要因)。ワンピースセールには、モールドの大きさとデザインの問題から、作れるサイズと大きさに物理的限界がある点等です。しかし一方でM3TM Techonologyのセールは、モールドセールには存在していた様々な欠点を改善した、革新的なセールであるといえます。